制度の土台から読み解く未来。保険料・自己負担の見直しに介護事業所はどう備えるべきか?
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《《《前のコラム 6-3.【令和9年度介護報酬改定】地域包括支援体制の再編と事業所が知るべき6つのポイント
《《《前のコラム 6-4.【2027年改定】令和9年度介護報酬改定の主要5ポイントと今すぐ進めるべき準備

【令和9年度介護報酬改定】第1号保険料と給付・負担の見直しを徹底解説
令和9年度(2027年度)の介護報酬改定に向け、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では「第1号保険料の在り方」や「給付と負担の見直し」を巡る重要議論が本格化しています。本記事では、介護費用の推移や制度の背景を紐解きながら、介護事業所の経営者・管理者が今知るべきポイントを分かりやすく解説します。
はじめに:令和9年度改定の議論は「制度の土台」から始まっている
「令和9年度の介護報酬改定で、自社のサービスの基本報酬は上がるのか、下がるのか──」
多くの介護事業所の経営者や管理者にとって、最も気になるのは報酬単価や加算の動きでしょう。しかし、今回の改定を読み解くうえでは、もう一つ欠かせない重要な視点があります。
それは、「そもそも介護保険制度自体が、どのような財政・構造のもとで成り立っているのか」という根幹の仕組みです。
介護報酬は事業所に支払われる公的サービスへの対価ですが、その財源は利用者の自己負担だけではありません。65歳以上が納める「第1号保険料」、40歳〜64歳が負担する「第2号保険料」、そして国・都道府県・市町村による「公費」が約半数ずつを分担し合うことで支えられています。社会保障審議会介護保険部会では、この土台となる「第1号保険料の在り方」と「持続可能性の確保(給付と負担)」について本格的な議論が進められています。
1. 制度創設から25年──急増する費用と「第1号保険料」の限界
介護保険制度が発足した2000年以降、介護サービスは高齢者の暮らしを支える不可欠な社会インフラとして定着しました。しかし同時に、それを支える費用も膨れ上がっています。
- 介護費用の総額:制度創設時の約3.6兆円から、予算ベースで14.3兆円(約4倍)へ拡大
- 第1号保険料(全国平均基準額):制度スタート時の月額2,911円から、第9期では月額6,225円(2倍以上)へ上昇
現役世代が減少していく中で、これ以上の保険料引き上げには限界があります。そこで焦点となっているのが、「被保険者の負担能力に応じた保険料設定(応能負担の徹底)」です。
現在、第1号保険料は所得に応じて段階分けされていますが、今後の見直しでは以下のような点が議論されています。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 高所得層の標準乗率の見直し: 負担能力のある高所得者に対して、より適切な負担を求める。
- 課税化に伴う上昇緩和措置: 物価高や年金改定で「住民税非課税」から「課税」へ区分が変わった際、保険料が急増して生活を圧迫しないような激変緩和策を検討する。
■ 現場・事業所へのインパクト
保険料の改定が直接ケアプランを変えるわけではありません。しかし、利用者の「可処分所得(手元に残る生活費)」に直結するため、地域の相談現場においては、高齢者の経済的実態に配慮した丁寧なサービス提案や生活支援の視点がこれまで以上に求められます。
2. 「給付と負担」の見直し:なぜ自己負担や資産が論点になるのか?
第1号保険料と並んで議論が紛糾するのが、利用者自身の「給付と負担」の再設計です。現在、サービス利用時の自己負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある人は2割または3割となっています。今回の部会では、この「一定以上所得」の対象範囲をどこまで広げるか、また要軽度者(要支援1・2)へのサービス提供のあり方をどう見直すかが改めて取り上げられています。
さらに今回の議論で注目すべきは、「金融所得や金融資産」を負担能力の判断にどう反映させるかという点です。従来の「年金収入や給与所得」だけでなく、預貯金や株式などの資産背景も含めた負担の公正性を求める声が上がっています(※実務上の把握課題が多いため、現在は慎重な継続検討課題とされています)。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
■ 現場・事業所へのインパクト
負担割合が1割から2割に引き上がれば、利用者やご家族にとっては実質2倍の自己負担となり、利用控えやサービス回数の削減が発生する懸念があります。事業所としては、単にサービスを提供するだけでなく、「アセスメント段階から自立支援効果を明確にし、なぜこのサービスが不可欠なのかを丁寧に説明して納得を得るプロセス」が今まで以上に経営の生命線となります。
📌 まとめ:経営者が今から持っておくべき視点
「給付と負担」の議論は、介護事業所を締め付けるためのものではなく、「限られた財源の中で制度を破綻させず、本当に必要なサービスを将来にわたって提供し続けるための再構築」です。
令和9年度改定に向けて事業所が持つべき視点は、「報酬が上がるか・下がるか」という短期的な損益だけではありません。「制度の支え手がどう変化し、それによって利用者のサービス利用行動がどう変わるのか」という大きなトレンドを見据え、選ばれ続ける自立支援型のサービス体制を今から整えていくことが重要です。
参考資料・情報源
- 厚生労働省「社会保障審議会(介護給付費分科会)」
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の広報資料について」
- 厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」
- 厚生労働省「全国介護保険担当課長会議資料」
※本稿で解説している制度・内容等は検討段階のものであり、今後の審議・省令発出等で変更される可能性があります。
最新情報は厚生労働省および自治体の公式情報を必ずご確認ください。
