介護事業所の電子申請なら公表システムサポート

6-1.令和9年度介護報酬改定のポイント解説!事業所が今すべき準備は

令和9年度改定を先回り解説シリーズvol.1
今度の介護報酬改定では、生産性向上と介護情報基盤、そして地域連携

メインビジュアル

令和9年度(2027年度)の介護報酬改定に向けた議論が本格化しています。今回の改定は、単なる介護報酬の単価見直しにとどまりません。
「2040年を見据えた地域包括ケアシステムの再構築」「介護現場の生産性向上」「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」など、これからの介護サービスの提供体制そのものに関わる重要なテーマが議論されています。さらに、令和9年度からは第10期介護保険事業計画がスタートするほか、介護情報基盤の整備・活用も進められます。
つまり、令和9年度の介護報酬改定は、「報酬がいくら変わるのか」だけを見るのではなく、介護事業所の経営・業務・地域連携・ICT活用を含めて考える必要がある改定といえるでしょう。このコラムでは、厚生労働省の審議会資料や関連資料をもとに、令和9年度介護報酬改定で注目される10のテーマを、介護事業所の目線から分かりやすく解説します。

令和9年度介護報酬改定とは?

介護報酬改定は、原則として3年に一度行われます。令和9年度の改定では、以下の視点が重要なテーマとなっています。
介護報酬改定2出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

  • 第10期介護保険事業計画
  • 地域包括ケアシステムの深化
  • 介護人材不足への対応
  • 生産性向上・経営改善
  • ICT・DXの推進
  • 地域の実情に応じたサービス提供体制

特に注目したいのは、「国が一律に制度を変更するだけではなく、地域ごとの人口構造や介護ニーズに合わせて、どのようにサービス提供体制を維持するか」という視点が強まっていることです。

そのため、介護事業所にとっては、厚生労働省の改定議論だけでなく、所在地の市町村が策定する介護保険事業計画や地域包括ケアシステムの動向を把握することも重要になります。

令和9年度介護報酬改定で注目すべき10のポイント

1.第10期介護保険事業計画の作成・支援

令和9年度から、第10期介護保険事業計画がスタートします。介護保険事業計画とは、市町村などが地域の高齢者人口や介護サービスの需要などを見込み、今後の介護サービスの整備方針を定める計画です。各市町村では、地域の高齢化率や介護ニーズなどを踏まえながら、必要なサービス量や提供体制について検討が進められます。
介護保険事業計画出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

【介護事業所が確認したいポイント】

自事業所が所在する地域について、以下の要素を確認しておきましょう。

  • 今後、どの介護サービスが必要とされているのか
  • 地域密着型サービスの整備方針はどうなっているのか
  • 在宅介護をどのように支えるのか
  • 介護人材をどのように確保するのか
  • ICT・DXをどのように活用するのか

介護保険事業計画は、地域の介護サービス提供体制を考えるうえで重要な資料です。「報酬改定が決まってから考える」のではなく、地域の計画を先に確認しておくことが、今後の事業展開を考えるうえで重要です。

2.各市町村の地域包括ケアシステムがさらに重要に

地域包括ケアシステムとは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で生活を続けられるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組みです。今後は、地域ごとの人口構造や社会資源に応じて、地域包括ケアシステムをさらに深化させていくことが求められます。地域包括ケア出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

【介護事業所への影響】

介護事業所も、単独でサービスを提供するだけではなく、医療機関との連携/他の介護サービスとの情報共有/多職種連携/地域ケア会議への参加/重度化防止/認知症ケア/在宅生活の継続支援など、地域の中でどのような役割を担うのかが、これまで以上に重要になります。「自社のサービスをどう提供するか」だけでなく、「地域の中で自社が何を担うのか」という視点が必要です。

3.頼れる身寄りがない高齢者への支援

今後の介護サービスを考えるうえで、見逃せないテーマが「頼れる身寄りがない高齢者」への支援です。単身高齢者などが増える中、入院・入所時の手続き/契約/意思決定/身元保証/死後事務など、家族が担ってきた役割を誰が支えるのかという課題が顕在化しています。身寄りがない高齢者への支援出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

【介護事業所が知っておきたい制度】

こうしたケースでは、成年後見制度/権利擁護支援/自治体との連携/医療機関との連携/意思決定支援などが重要になります。介護事業所としても、「家族がいないから対応できない」とするのではなく、地域の支援機関とどのようにつながるのかを整理しておくことが重要です。

4.有料老人ホームの制度見直しと「囲い込み」防止

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などをめぐっては、「囲い込み」への対応が重要なテーマとなっています。
有料老人ホーム制度の見直し出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

💡 補足解説:「囲い込み」とは?

利用者に対して特定の事業者や自社系列の介護サービスを不必要に利用させるなど、利用者のサービス選択を妨げるような行為を指します。介護保険サービスは、利用者本人の状態や希望に基づいて適切に選択されることが基本です。

【介護事業所が確認したいこと】

今後は、ケアマネジメントの中立性/利用者本位のサービス選択/契約手続きの透明性/外部サービスとの適切な連携/運営状況の透明性などが、より重要になると考えられます。特に有料老人ホームやサ高住と介護サービスを一体的に運営している事業者は、自社サービスの利用を前提とした運営になっていないか、あらためて確認しておくことが重要です。

5.介護現場の生産性向上・経営改善支援

介護人材不足が続く中、「限られた人材で、どのように質の高い介護サービスを提供するか」は、介護業界全体の大きな課題です。そのため、令和9年度改定に向けても、ICT・AIの活用、介護ロボット、業務改善、タスクシフト、文書作成・記録の効率化、DX推進、経営改善などが重要なテーマとなります。介護現場の生産性向上出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集

【介護事業所が今からできること】
まずは、「どの業務に時間がかかっているのか」を洗い出しましょう。
(例:紙による記録/FAXによる情報送受信/同じ情報の二重入力/手作業による集計/書類作成/複数システムへの転記 など)
単に「ICTを導入する」のではなく、業務そのものを見直したうえで、ICTを活用することが生産性向上のポイントになります。

6.ケアプランデータ連携システムの利用率にも注目

ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間で、ケアプランに関する情報を電子的に連携するための仕組みです。従来のFAXや紙、手入力による情報連携を減らし、業務負担を軽減することが期待されています。
ケアプランデータ連携

【介護事業所にとってのメリット】

導入によって、FAX作業の削減/転記作業の削減/入力ミスの防止/書類管理の効率化/職員の事務負担軽減などが期待できます。
今後は、ケアプランデータ連携システムの利用率や普及状況が、介護DXを進めるうえで重要な指標となる可能性があります。また、介護情報基盤との関係も重要になるため、自社の介護ソフトがどのような連携に対応しているのかを確認しておくとよいでしょう。

7.コンパクト・プラス・ネットワークと地域の介護サービス

人口減少が進む地域では、介護サービスを従来と同じ形で維持することが難しくなっています。そこで注目されるのが「コンパクト・プラス・ネットワーク」という考え方です。これは、生活に必要な機能を一定の地域に集約し、公共交通などのネットワークによって各地域をつなぐ考え方です。介護分野においても、医療・介護・生活支援などの地域資源を効率的に組み合わせることが重要になります。

💡 CCRCとの違い・関係

CCRC(Continuing Care Retirement Community)は、高齢者が元気な段階から地域に移り住み、医療や介護が必要になっても継続して暮らせる環境を整える考え方です。「コンパクト・プラス・ネットワーク」とは同一の制度・概念ではありませんが、高齢者が地域で暮らし続けられる環境づくりという点では、関連する考え方として理解できます。

8.特定地域(中山間・人口減少地域)のサービス提供体制

中山間地域や人口減少地域では、介護人材や利用者の確保が難しく、事業所単独でサービスを維持することが難しいケースがあります。そのため、特定地域におけるサービス提供体制のあり方についても検討が進められています。資料では、エリア区分、複合型サービス、人員配置、地域の実情に応じたサービス提供などが重要な論点となっています。

【介護事業所が確認したいこと】

自事業所が中山間地域・人口減少地域に該当する場合は、現在の指定・サービス提供区域/人員配置/移動時間・訪問効率/複数サービスの組み合わせ/地域加算等の取り扱いなどを確認しておきましょう。地域によっては、今後、従来とは異なるサービス提供体制が求められる可能性があります。

9.要介護認定制度の見直し・手続きの効率化

介護サービスを利用するための入口となるのが要介護認定です。現在、認定調査や審査判定には多くの事務負担が発生しているため、今後は、ICTの活用、認定調査の効率化、認定有効期間の柔軟化、更新手続きの効率化などが検討されています。

認定制度の見直しが進めば、利用者にとっても介護サービスを利用するまでの手続きが変わる可能性があります。介護事業所としても、今後発出される制度変更や自治体からの案内を確認し、利用者・家族への説明に備える必要があります。

10.介護情報基盤への移行

令和9年度に向けて、特に注目したいのが「介護情報基盤」です。介護情報基盤は、介護に関する情報を電子的に共有・活用するための基盤です。これまで紙や個別のシステムで管理されていた情報を、より効率的に連携・活用することで、ケアの質の向上/情報共有の効率化/事務負担の軽減/医療・介護連携などにつなげることが期待されています。

今後は、LIFE、ケアプランデータ連携、マイナンバーカード、医療DXなどとの関係も重要になります。

【介護事業所が今から確認したいこと】
まずは、「現在利用している介護ソフトは、今後の介護情報基盤に対応できるのか?」を確認してください。
あわせて、介護ソフトのバージョン/データ連携への対応状況/ベンダーの今後の対応予定/パソコン・ネットワーク環境/職員の操作体制なども確認しておくと安心です。
介護情報基盤への対応は、直前になって慌てて準備するのではなく、早い段階から情報収集を進めておくことが重要です。

令和9年度改定に向けて、介護事業所が今からやるべき5つの準備

ここまでの内容を踏まえると、介護事業所が今から取り組みたいことは、大きく5つに整理できます。
介護事業所が準備すべきこと

  1. 市町村の第10期介護保険事業計画を確認する
    自社の地域で、「これからどのような介護サービスが必要とされるのか」を確認しましょう。
  2. 地域包括ケアシステムの中で自社の役割を整理する
    医療機関や他の介護サービス、自治体などとの連携状況を確認し、自社が地域で担う役割を整理します。
  3. ICT・DXの現状を棚卸しする
    ケアプランデータ連携システムや介護情報基盤への対応を含め、現在のシステム環境を確認します。
  4. 業務のムダを洗い出す
    紙、FAX、転記、二重入力など、職員が時間を取られている業務を洗い出しましょう。
  5. 最新情報を継続的に確認する
    介護報酬改定は、現時点ですべてが決定しているわけではありません。厚生労働省の審議会資料や通知、自治体からの情報を継続的に確認し、「検討中の事項」と「決定事項」を区別することが重要です。

令和9年度介護報酬改定は、介護サービスの単価だけを確認していれば対応できる改定ではありません。
第10期介護保険事業計画、地域包括ケアシステム、身寄りのない高齢者への支援、有料老人ホームの囲い込み防止、生産性向上、ケアプランデータ連携、特定地域への対応、要介護認定、そして介護情報基盤――。
これらのテーマは、一見すると別々の制度に見えますが、その根底にあるのは、「限られた人材と地域資源を活用しながら、介護を必要とする高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられる体制を、どう維持していくか」という共通した課題です。
そして、その変化は介護事業所の経営や日々の業務にも直結します。特に今後は、「地域」「DX」「生産性」「情報連携」の4つが、介護事業所の経営を考えるうえで重要なキーワードになるでしょう。
令和9年度の制度改正が正式に決まってから準備を始めるのではなく、今の段階から地域の計画や自社の業務、ICT環境を見直しておくことが重要です。本シリーズでは今後、これら10のテーマについて、それぞれの制度の背景、具体的な変更点、介護事業所への影響、必要な手続き、今から準備すべき事項まで、さらに詳しく解説していきます。

「令和9年度改定への対応は、もう始まっています。」

介護事業所の方には、今後の制度変更を待つだけではなく、自事業所の現状を確認し、できるところから準備を進めることをおすすめします。

参考資料・情報源

本稿では、厚生労働省が公表している以下の資料を主な情報源として構成しています。

なお、本稿で紹介している内容には、現時点で「検討中」の事項が含まれます。令和9年度介護報酬改定の具体的な報酬単価、算定要件、人員基準、届出・申請方法等については、今後の審議会資料、告示、通知等によって変更される可能性があります。公開時には、最新の厚生労働省資料および自治体からの通知等をご確認ください。