【令和9年度介護報酬改定】地域包括支援体制の再編と事業所が今すぐ準備すべき6つのポイント(解説シリーズvol.3)
《《《前のコラム 6-1.令和9年度介護報酬改定のポイント解説!事業所が今すべき準備は
《《《前のコラム 6-2.令和9年度介護報酬改定のポイント解説!地域類型の3区分と特定地域とは?
次の介護報酬改定は、単なる単位数の見直しにとどまらない!
地域の実情や課題に応じて「地域密着型経営」への転換点。
はじめに:令和9年度改定で「地域」が最重要テーマになる理由
vol.1では改定全体の方向性と事業所が取り組むべき準備、vol.2では中山間・人口減少地域における「地域類型」と特定地域について解説してきました。今回のvol.3では、さらに一歩踏み込んで「地域の実情に応じた包括的な支援体制」を紐解きます。
令和8年に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき、厚生労働省の資料では多くの改正事項について令和9年4月1日施行が示されています。
背景にあるのは、2040年に向けた急速な生産年齢人口の減少、単身高齢者の増加、そして介護人材不足です。全国一律の基準だけでは地域の介護サービス網を維持することが困難になりつつある中、自事業所の運営だけでなく「地域全体でどうサービスを維持し、他機関と連携していくか」が今後の事業所経営の命運を握ります。
本稿で解説している制度のうち、令和9年度介護報酬改定に関する具体的な報酬単価、加算要件、人員配置基準、手続き方法等については、今後の審議・告示・通知等によって確定・変更される可能性があります。実際の運営にあたっては、必ず最新の厚生労働省通知および所在自治体の公表情報をご確認ください。
主なトピックス:知っておくべき6つの制度改正
1.小規模市町村における「包括的な支援体制」の整備
過疎化が進む小規模市町村では、「介護」「障害」「子育て」などの分野ごとに専門職を配置することが難しく、縦割り行政による支援の限界が課題となっています。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 制度改正のポイント: 相談支援、地域づくり、支援体制の協働推進の3事業を一体的に実施できる仕組みが新設され、分野を超えた柔軟な人員配置が可能になります。
- 事業所への影響: 介護事業所は「介護のみを担当する」存在から、地域全体の支援ネットワークの一員へと役割が広がります。市町村や地域包括支援センター、他分野機関との連携が従来以上に重要となります。
2.特定地域サービス・特定地域居宅サービス等事業の新設
中山間地域や人口減少地域等におけるサービス基盤を守るため、新たなサービス形態および事業形態が創設されます。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 特定地域サービス(介護給付・予防給付): 人口密度等の一定指標を満たす地域において、都道府県等の条例で人員配置基準や設備基準を柔軟に設定(弾力化)可能に。従来の「出来高払い」に加え、経営安定化のための「月当たり定額報酬(包括的評価)」が選択可能となります。
- 特定地域居宅サービス等事業(地域支援事業): 民間事業所の単独運営が困難な地域で、市町村が主体(自ら実施、または事業者へ委託)となって訪問・通所・短期入所等の生活に必要なサービスを確保する仕組みです。
3.「通いの場」を中心とした介護予防・地域の支え合い拠点化
住民主体の「通いの場」を単なる介護予防の場にとどめず、地域の多世代交流や多様な生活課題を支える「コミュニティ拠点」として機能強化を図ります。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
事業所に期待される役割
: 通所介護、地域密着型サービス、小規模多機能、居宅介護支援事業所などは、専門職(機能訓練指導員やケアマネジャー)のノウハウを活かして地域活動のバックアップを行う体制づくりが期待されます。
4.頼れる身寄りのない高齢者等への支援体制
独居高齢者の急増に伴い、緊急連絡先の不在、入院・施設入所時の手続き、死後の残置物処理や手続き代行の課題が深刻化しています。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 制度改正のポイント: 日常生活支援、入院・入所手続き支援、死後事務支援を行う事業が「第二種社会福祉事業」として位置付けられ、ガイドラインの明確化や相談窓口の整備が進められます。
- 現場の対応: 介護事業所がすべての役割を抱え込むのではなく、地域包括支援センターや社会福祉協議会、権利擁護機関へ適切につなぐ連携ルートを整理しておくことが肝心です。また、不正トラブルを防ぐため契約範囲の明確化も求められます。
5.成年後見制度等の適切な利用と権利擁護支援
認知症高齢者の増加に伴い、意思決定や財産管理が困難な利用者を守る仕組みの強化が進みます。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 制度改正のポイント: 市町村が「地域権利擁護相談支援センター」を設置できる仕組みが示され、地域全体で権利擁護を支えるネットワークが強化されます。
- 事業所の対応: 判断能力が低下した利用者や家族の支援が得られないケースに対し、早期に自治体の中核機関や社会福祉協議会と連携し、申立て支援や保佐・補助へ繋げる体制を整えておく必要があります。
6.有料老人ホーム制度の見直しと「囲い込み」防止
住宅型有料老人ホーム等におけるサービス選択の阻害(いわゆる囲い込み)や過剰なサービス提供を防ぎ、適正な運営管理を担保するための改革です。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
- 見直しのポイント: 一定のホームに対する登録制度の導入や、「特定の介護サービス事業者の利用を入居要件とすることの禁止」が明確化されます。
- 登録施設介護(予防)支援の新設: 登録対象ホームの入居者に対し、独立したケアマネジメントや地域生活相談を一体的に行う新たな相談支援の仕組みが導入されます。
7.第10期介護保険事業(支援)計画による中長期影響
令和9年度から始まる「第10期介護保険事業計画」では、中長期的な介護サービス量の推計が必須化されます。
医療・介護連携や住まい(有料老人ホーム等)を含めた地域全体の需給バランスが精査されるため、介護事業所の経営においても「行政が作る計画」と切り離さず、「自社周辺圏域の将来的な人口動態と需要推計」を把握した経営戦略へのシフトが不可欠です。
介護事業所が今から準備すべき具体的な「4つの手順」
改定直前に慌てることなくスムーズに対応できるよう、以下のステップで準備を進めていきましょう。
ステップ 1
地域区分の確認と需要予測
- 自事業所の指定地域が「特定地域」や「人口減少・特別地域加算の対象」に該当するか情報を確認する。
- 自治体の第10期介護保険事業計画から、自事業所エリアの将来需要動向をチェックする。
ステップ 2
市町村・地域包括支援センター等との連携強化
- 身寄りのない高齢者や権利擁護が必要な利用者への相談・連携ルートを再確認・整理する。
- 特定地域サービスや委託事業の導入計画について、自治体の介護保険担当課との事前対話を行う。
ステップ 3
契約関係・運用規程の点検
- 有料老人ホームやサ高住併設事業所は、サービスの自由選択やケアマネジメントの独立性を点検する。
- 身寄りがない利用者への対応規程、重要事項説明書、個人情報保護規程等の整合性を確認する。
ステップ 4
介護保険情報公表システムでの適正な情報開示
- 公表システム(介護サービス情報公表システム等)を活用し、人員配置や権利擁護・防災への取り組み、サービス選択の透明性を最新情報へタイムリーに更新・公表する。
vol.1 令和9年度介護報酬改定のポイント解説!事業所が今すべき準備は
vol.2 令和9年度介護報酬改定のポイント!地域類型と特定地域とは
vol.3 令和9年度介護報酬改定のポイント解説!地域の実情に応じた包括的な支援体制とは
編集後記(次年度の改定に向けて)
今回の令和9年度改定の根底にあるのは、「人口減少・人材不足が進む地域で、いかにして介護という社会インフラを維持するか」という構造改革です。
これまでのように「自事業所の加算取得」や「単位数」だけを追い求める経営では、地域の変化に取り残されてしまう可能性があります。特定地域サービスの月額定額報酬化や市町村委託、地域包括支援体制の活用など、行政や他事業者との「横の繋がり」を強めることこそが、結果として事業所の持続可能性と経営の安定化に直結します。
正式決定を待つだけでなく、今のうちから地域の課題や行政の動向に目を配り、柔軟な事業展開の準備を進めていきましょう。
