難しい運営規程や重要事項のひな型を、かんたんに調べるには?
標準タイプの東京都と、完璧タイプの大阪府でもこんなに違う!
《介護事業所の運営規程や重要事項向け》
◆このコラムでは運営規程や重要事項のひな型を紹介
・指針となる厚生労働省の省令や基準は
・標準タイプの東京都のひな型:記入例は
・完璧タイプの大阪府のひな型:記入例は
・東京都と大阪府のひな型:記入例を検証
《《《前のコラム 3-5.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」電子掲示は完結に(複合ワザ) 後篇
令和6年度の改定(*)によって、介護事業所の運営規程や重要事項などの情報は、全サービスを通じてインターネット上での「電子掲示」が義務化されましたが、サービス種別ごとの運営基準(*)についても、細かな改定がされました。
厚生労働省が策定する省令には、大きく居宅サービス/施設サービスに分かれて、サービス種別ごとの、人員、設備及び運営関する基準が記載されており、令和3年度に引き続き、令和6年度の改定によって、その内容が改定されてました。
介護事業所は、これらの省令や基準に準拠する形で、各社が提供する介護サービスについて、その要件や内容を決めていくことになりますが、法令や契約に係る専門的な分野で、その書式や文言などの表現についても、細かく配慮する必要があります。
そのため介護事業所を運営する代表者や管理者の方からは、運営規程や重要事項のひな型や記入例がないか要望を受けることがあり、その書式や文言などの表現についても、近年の改定に合わせて見直しをしたい意見がありました。
そこでこの解説コラムでは、難しい運営規程や重要事項などの情報を、かんたんに調べて参考にする、ひな型のモデル事例をご紹介します。
事前の留意点
・運営規程や重要事項等の法務については、サービス提供する事業環境に合わせて、各自の介護事業所が責任を持って作成してください。(当サイト上にも、利用規約として免責事項や禁止事項等を定めています)
参考情報①介護報酬改定における改定事項(*)
厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
参考情報②サービス種別ごとの運営に関する基準(*)
厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
厚生労働省「指定介護老人保健施設の人員、設備及び運営に関する基準」
厚生労働省「指定介護医療院の人員、設備及び運営に関する基準」
指針となる厚生労働省の省令や基準は
介護事業所の運営規程等の情報については、厚生労働省が定めるサービス種別ごとの運営基準がベースとなりますが、社会情勢や事業環境を踏まえて、令和3年度から令和6年度にかけて、その内容や方法が改定されてきています。
令和3年度の改定では、感染症や自然災害の発生を踏まえた業務継続計画(BCP)の策定や、人的事故やリスクに配慮した虐待防止や拘束廃止(ハラスメント対策)などへの対応が必要となっています。、
さらに令和6年度の改定ではそれらを踏まえた運営規程や重要事項の情報を、インターネット上で掲載・公表しなければならない義務となりました。
◆令和3年度介護報酬改定における改定事項
令和3年度の改定では、感染症や災害の発生を踏まえた業務継続計画(BCP)の策定や、人権の尊重や人的事故・リスクに配慮した虐待防止などへの対応が必要となっています。
令和3年度介護報酬改定における改定事項
主な内容
・感染症や災害への対応力強化
・地域包括ケアシステムの推進
・自立支援・重度化防止の取組の推進
・介護人材の確保・介護現場の革新
・制度の安定性・持続可能性の確保など
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」より引用・編集
◆令和6年度介護報酬改定における改定事項
介護事業所の運営規程や重要事項等の情報は、事業所内での「書面掲示」に加えて、インターネット上での「電子掲示」が義務化されました。
令和6年度介護報酬改定における改定事項
主な内容
・地域包括ケアシステムの深化・推進
・自立支援・重度化防止に向けた対応
・良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり
・制度の安定性・持続可能性の確保
・その他(「書面掲示」規制の見直し)など
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」より引用・編集
指針となる厚生労働省の省令や基準は
基本となるのは厚生労働省が定める省令になるため、サービス種別ごとの運営基準をチェックしておきましょう。
居宅サービスの運営基準
・訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護のようにサービス種別ごとに、運営規程が展開します。
施設サービスの運営基準
・同じように介護老人保健施設、介護医療院でも運営基準の省令があります。
◆代表例として訪問介護のケース事例
介護サービスの代表例として訪問介護を例に挙げると、令和6年度の改定を受けて、細かな変更や追加がされています。(重要事項のウェブサイト掲載も追加)
・・・(中略)・・・
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準
第二章 訪問介護
・・・(中略)・・・
(運営規程)
第二十九条 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての
重要事項に関する規程(以下この章において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。
一 事業の目的及び運営の方針
二 従業者の職種、員数及び職務の内容
三 営業日及び営業時間
四 指定訪問介護の内容及び利用料その他の費用の額
五 通常の事業の実施地域
六 緊急時等における対応方法
七 虐待の防止のための措置に関する事項
八 その他運営に関する重要事項
(介護等の総合的な提供)
第二十九条の二 ・・・(中略)・・・
(勤務体制の確保等)
第三十条 ・・・(中略)・・・
(業務継続計画の策定等)
第三十条の二 ・・・(中略)・・・
(衛生管理等)
第三十一条 ・・・(中略)・・・
(掲示)
第三十二条 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所の見やすい場所に、運営規程の概要、訪問介護員等の勤務の体制その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項(以下この条において単に「重要事項」という。)を掲示しなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、重要事項を記載した書面を当該指定訪問介護事業所に備え付け、かつ、これをいつでも関係者に自由に閲覧させることにより、前項の規定による掲示に代えることができる。
3 指定訪問介護事業者は、原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない。
出典:厚生労働省ホームページより引用・編集
・厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人保健施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護医療院の人員、設備及び運営に関する基準」
標準タイプの東京都のひな型:記入例は
東京都の運営規程などの情報は、標準的なひな型や書式で示していることが多く、東京都のひな型が、全国的な記入例になっているケースもあります。(代表的なケースでは、有料老人ホームの重要事項説明書など)
そして東京都福祉局のホームページでは、事業所向けの介護サービス情報やお知らせを情報提供しており、このページ上に運営基準や運営規程の記入例が掲載されています。
「東京都介護サービス情報」
1 訪問介護(新規に指定を受けたい方へ)
・人員、設備及び運営に関する基準について
・・・(中略)・・・
・運営規程の例
・料金表の例
タブの右側へクリックすると、2訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護、3訪問看護・介護予防訪問看護のように、居宅サービスの種別ごとの情報が展開します。(施設サービスの情報掲載はなし)
出典:東京都福祉局ホームページより引用・編集
・東京都福祉局「東京都介護サービス情報」
・東京都福祉局「事業者へのお知らせ(通知文書等)」
◆東京都の運営規程の記入例:訪問介護のケース
訪問介護の運営規程の記入例を見ると、必要な要件や内容が展開するもので、その書式や文言などの表現は必要最低限のものになっています。
この記入例は令和5年10月時点のものになり、近年の社会情勢や事業環境を踏まえた重要事項の追加やインターネット上で掲載・公表は、まだ掲載されていない状況です。(2025年5月時点での情報)
→東京都のひな型を参照する場合には、感染症や自然災害の発生を踏まえた業務継続計画(BCP)の策定や、人的事故やリスクに配慮した虐待防止や拘束廃止(ハラスメント対策)などの重要事項の追加や、インターネット上で掲載・公表する旨の記載が必要となります。
出典:東京都福祉局ホームページより引用・編集
・東京都福祉局「東京都介護サービス情報」
・東京都福祉局「事業者へのお知らせ(通知文書等)」
完璧タイプの大阪府のひな型:記入例は
大阪府で介護事業所を新規に申請・開設する際には、行政への事前説明やチェックが多く、事業所の運営についても、行政からの調査や指導が細かく見られる地域特性があります。
特に大阪府では、高齢者住宅に隣接する訪問介護・訪問看護の過剰なサービス提供を抑制するために、行政が事業所を厳しくチェックして、運営指導を行うケースもあります。(代表的なケースでは、高齢者住宅に隣接する介護事業所や、同一建物内でのサービス提供など)
そして大阪府福祉部のホームページでは、事業所向けの様式ライブラリーを情報提供しており、このページ上に運営規程や重要事項説明書の記入例が掲載されています。
大阪府福祉部「様式ライブラリー」
・1.運営規程記入例
・2.重要事項説明書モデル様式
画面をスクロールすると、居宅サービスの種別ごとの情報が展開します。
(施設サービスの情報掲載も別ページにあり)
出典:大阪府福祉部ホームページより引用・編集
・大阪府福祉部「指定居宅サービス事業者 > 様式ライブラリー」
・大阪府福祉部「介護保険施設(特養、老健、療養、医療院)事業者 > モデル様式ライブラリー」
◆大阪府の運営規程の記入例、重要事項説明書のモデル様式:訪問介護のケース
この記入例は令和6年11月と令和7年2月時点のものになり、近年の社会情勢や事業環境を踏まえた重要事項の追加やインターネット上で掲載・公表にも対応した、モデル様式になっています。(2025年5月時点での情報)
訪問介護の運営規程の記入例を見ると、記入例と並んで留意事項等がコメントされており、書き方や表現を細かに補足する情報が掲載されています。
訪問介護の重要事項説明書のモデル様式を見ると、赤字部分が色分けがされて、最近の改定を踏まえたインターネット上で掲載・公表、業務継続計画(BCP)の策定や、人的事故やリスクに配慮した虐待防止や拘束廃止(ハラスメント対策)などの重要事項が追加されています。
また大阪府が注視する高齢者住宅に隣接する介護事業所や、同一建物内でのサービス提供なども、赤字で掲載されて、そのサービス内容について言及しています。
→大阪府のひな型を参照する場合には、記入例に沿って掲載していくことで、必要充分な内容をカバーできる一方で、作成する事項や分量が多くなってしまうため、実際に提供するサービスに合わせて、調整することも検討しましょう。
出典:大阪府福祉部ホームページより引用・編集
・大阪府福祉部「指定居宅サービス事業者 > 様式ライブラリー」
・大阪府福祉部「介護保険施設(特養、老健、療養、医療院)事業者 > モデル様式ライブラリー」
東京都と大阪府のひな型:記入例を検証
このように東京都と大阪府のホームページに掲載されている、運営規程や重要事項のひな形:記入例を比べても、その書式や文言などの表現は、大きく傾向が分かれる形となりました。(2025年5月時点での情報)
標準タイプの東京都のひな型
東京都の運営規程の記入例は、必要最低限の内容を掲載したいく傾向が見られ、その文言や表現は簡潔な文章で、コンパクトな分量に収められています。
また情報更新の時点がやや古く、最近の令和6年度の改定を踏まえた重要事項の追加や、インターネット上で掲載・公表する旨の記載が必要となります。
完璧タイプの大阪府のひな型
その一方で大阪府では、運営規程の記入例と重要事項説明書のモデル書式をセットで公表しており、その書き方や文言・表現を細かに補足する情報が掲載されており、規程する事項や分量も多くなってしまう傾向が見られます。(情報更新の時点が新しく、最近の令和6年度の改定を踏まえた項目も記載済み)
加えて管轄する行政側から注視する部分がフォーカスされる意図も読み取れ、高齢者住宅に隣接する介護事業所や、同一建物内でのサービス提供などが赤字で掲載されて、そのサービス内容を細かに規程する部分も強調されています。
東京都と大阪府のひな型検証を振り返り
難しい運営規程や重要事項のひな型
このコラムでは、介護事業所の運営規程や重要事項のひな形として、東京都と大阪府の記入例を取り上げましたが、管轄する行政によっても、法務面の書式や文言などの表現、規程する細かさのレベルは分かれる傾向になりました。
介護事業者の目線で、これから運営規定や重要事項などを見直しする際には、管轄する行政のホームページや発表資料をチェックして、地域ごとの運営基準やローカルルール(独自ルール)を確認して、法務面の書式や文言などの表現、規程する細かさのレベルをチェックした方が良いでしょう。
「電子申請のトリセツ」重要事項サポートプランでは、運営規程や重要事項のひな型やケース事例も追加していく予定です。(会員向け)
また最近ではAIによって書面や文言をチェックする機能も発達しているので、細かい法務面の情報をAIでチェックしてから、人的に見直すことも、かんたんに進める方法の1つです。
》》》次のコラム(準備中)
◆介護事業所の運営規程や重要事項の解説コラム ラインナップ
3-1.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」イントロダクション
3-2.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」チェックするフローチャート
3-3.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」書面掲示は簡単に(神ワザ)
3-4.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」電子掲示は完結に(複合ワザ) 前篇
3-5.2025年版「運営規程や重要事項の解説コラム」電子掲示は完結に(複合ワザ) 後篇
参考情報(出典)
介護事業所の運営規程や重要事項等の情報については、厚生労働省や管轄行政の発表資料をご覧ください。
・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
・厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人保健施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護医療院の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「介護保険制度等における指導監督」
・厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」
・東京都福祉局「東京都介護サービス情報」
・東京都福祉局「事業者へのお知らせ(通知文書等)」
・大阪府福祉部「指定居宅サービス事業者 > 様式ライブラリー」
・大阪府福祉部「介護保険施設(特養、老健、療養、医療院)事業者 > モデル様式ライブラリー」