国際福祉機器展(H.C.R.)2025での特別講演
テーマは「ケアプランデータ連携システム」と「介護情報基盤」
厚生労働省と国保中央会による介護現場におけるICT化の特別講演
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2025年10月に開催された国際福祉機器展(H.C.R.)2025では、厚生労働省老健局と国民健康保険中央会による特別講演が行われました。
テーマは「ケアプランデータ連携システムの普及促進」および「介護情報基盤の整備と今後の予定」。
介護業界では、2040年に向けて介護職員が約57万人不足すると推計されており、人材確保と同時に「業務の効率化」「デジタル化による生産性向上」が急務となっています。この背景のもと、介護現場のICT化の柱として「ケアプランデータ連携システム」と「介護情報基盤」の整備が進められています。
出典(引用元)
・厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1419「ケアプランデータ連携システム及び介護情報基盤に関する国際福祉機器展(H.C.R.)2025 出展のお知らせ」
・国民健康保険中央会「ケアプランデータ連携システム」ヘルプデスクサポートサイト
「国際福祉機器展(H.C.R.)2025 資料公開のお知らせ」
◆コラムでは、介護現場におけるICT化の特別講演を紹介
1.介護現場の生産性向上について
2.ケアプランデータ連携システムについて
3.介護情報基盤について
・今後の介護現場におけるICT化のまとめ
開催概要
国際福祉機器展(H.C.R.)2025特別講演
介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進
・日程:10月8日(水)14:30~15:30
・場所:東京ビッグサイト(東京国際展示場)西1展示ホール会場B
・講師:厚生労働省 老健局 高齢者支援課 長谷田氏
公益社団法人 国民健康保険中央会 泉氏
厚生労働省 老健局 老人保健課 野口氏
1.介護現場の生産性向上について
▶ 介護現場の課題
介護現場では依然として郵送やFAXによる書面のやりとりが多く、紙文書による転記ミスや確認作業が重なることで、効率が上らない=生産性の低下を招いていました。
国は第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)において、「ICT導入による業務改善と職員負担の軽減」を重点施策に位置づけています。
出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ICTを活用したデータ連携の重要性
そのため令和6年度の介護報酬改定では、生産性向上の取り組みを評価する加算も新設されて、紙文書からICTを活用したデータ連携を導入することで、介護現場の記録・連絡・報告の時間が大幅に短縮されたという成果も報告されています。出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ ケアプランデータ連携システムの導入や支援
さらに都道府県ごとに設置が進む「ワンストップ相談窓口」や「ICT伴走支援」も、このシステムの導入を支える仕組みとして活用が進んでいます。
出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
2.ケアプランデータ連携システムについて
▶ 紙からデジタルへ
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所の間で行われるケアプランの「予定・実績」データを、オンラインで安全にやり取りできる仕組みです。
従来の紙文書の郵送・FAXを置き換えることで、
・転記ミスの削減
・請求返戻リスクの低下
・印刷・郵送コストの削減が確認されています。
出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ システムの構成
オンライン上で、ケアプランデータ連携システムと、介護事業所の端末・クライアントアプリの連携により、電子証明書を用いて安全にデータを送受信。出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
システムの導入も容易で、2025年度からは1年間無料のフリーパスキャンペーンが実施されています。出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ 操作イメージ
このケアプランデータ連携システムにより、異なる介護ソフト間でも、標準化された仕様でデータ交換が可能になり、介護現場での紙文書の「FAX・印刷・確認」作業が大幅に削減されます。
3.介護情報基盤について
▶ 介護情報基盤とは
厚生労働省が法改正(令和5年法律第31号)に基づき整備を進めている、全国共通の介護情報プラットフォームです。出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
この情報プラットフォームにより、
・要介護認定情報
・LIFE(科学的介護)情報
・ケアプラン情報
・被保険者証・負担割合証情報
・住宅改修費などが電子的に共有・閲覧できるようになります。
▶ 統合の方向性
国保中央会が運用する「ケアプランデータ連携システム」と統合して、介護情報基盤として一体的に運用されることで、
・介護事業所の利便性向上
・ランニングコストの軽減
・データ連携の普及・促進の効果が期待されています。出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ 主な機能と効果
出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
▶ 今後のスケジュール
2026年度より全国の自治体で本格運用が開始予定。(導入する自治体に応じて順次)
〔次回の情報発表の予定〕
厚生労働省では、10月下旬を目安に、介護情報基盤ポータルサイトにて情報発表を予定
出典:介護情報基盤の運用開始に向けたケアプランデータ連携システムの利用促進セミナーより引用・編集
今後の介護現場におけるICT化のまとめ
― データ連携がもたらす「ケアの質」の向上へ ―
ケアプランデータ連携システムと介護情報基盤は、介護現場での紙文書の作業を、ICTを活用したデータ連携で効率化することにより、業務の効率化を狙ったツールになります。
これら間接業務の効率化によって、本来業務の介護サービスに余裕が生まれ、介護職員が利用者さんに向き合って、ケアにあたる時間を確保でき、「ケアの質」を高めることにもつながります。
そして今後は、新たなシステムやプラットフォームが立ち上がってくるため、それを導入・活用する準備を進めていくことをおすすめします。
〔今後のデータ連携に向けた準備〕
ハード面:システム導入環境の整備(PC・ネットワーク・電子証明書、ICカードリーダーなど)
ソフト面:デジタル活用人材の育成と、介護職員への社内研修やマニュアルの整備
情報共有:地域ごとに、介護事業所が集まる連絡会や会議等での利用促進・情報共有
出典・参考情報
厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1419
「ケアプランデータ連携システム及び介護情報基盤に関する国際福祉機器展(H.C.R.)2025 出展のお知らせ」
国民健康保険中央会「ケアプランデータ連携システム」ヘルプデスクサポートサイト「国際福祉機器展(H.C.R.)2025 資料公開のお知らせ」
国民健康保険中央会「介護情報基盤ポータルサイト」