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3-22.【2026年最新】介護事業所のカスタマーハラスメント(カスハラ)対応まとめ

2026年10月からカスハラ対策が義務化!
介護事業所が今確認すべき「ルール・相談窓口・職員保護・記録・再発防止」をまとめて解説

介護現場のカスハラ対応ガイド

介護現場における深刻な課題としてクローズアップされている「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。2026年10月1日より、すべての事業主にカスハラ防止措置を講じることが法律で義務付けられます。

これまで過去3回のコラムでお伝えしてきた制度概要や実務のポイント、規程の記載例を踏まえ、今回は介護事業所が押さえておくべき全容をわかりやすく整理した「完全まとめ版」をお届けします。職員の安全と事業所の健全な運営を守るため、事前の準備にお役立てください。

1.介護事業所の「カスハラ」とは?|2026年10月義務化の背景

介護現場におけるカスタマーハラスメントとは、「利用者やその家族等からの不当・過剰な要求や暴言・暴力等の言動により、職員の就業環境が害される行為」を指します。

カスハラを構成する3つの要素

2026年10月1日から適用される厚生労働省の指針では、以下の3つの要素をすべて満たすものが職場におけるカスタマーハラスメントと定義されています。

  • ① 顧客等による言動であること
    介護事業所の場合、利用者・利用者の家族・取引先などが対象となります。
  • ② 社会通念上許容される範囲を超えていること
    要求内容や態様(手段・方法)が一般的な社会通念から大きく逸脱していることを指します。
  • ③ 労働者の就業環境が害されること
    職員が強い身体的・精神的苦痛を受け、業務に支障が生じる状態です。(※1回の深刻な行為でも該当する場合があります)

なぜ今、義務化されるのか?

介護サービスは密接な対人サービスという特性上、職員が暴言や無理な要求を受けるケースが少なくありません。これらを放置すると、職員の離職や精神的な不調を引き起こし、持続可能な介護提供体制そのものが揺らぎます。

全事業主にカスハラ防止措置を義務付ける労働施策総合推進法(ハラスメント防止法)等の改正に加え、厚生労働省の介護保険法に基づく省令(指定基準)の改定・整備が進められており、2026年度からは介護事業所の「必須義務」として位置づけられます。

2.「正当な苦情」と「カスハラ」の違い

カスハラ対策を進めるうえで極めて重要なのが、「苦情=すべてカスハラ」と誤認しないことです。

正当な苦情(正当な申入れ)

「説明と実際のサービス内容が異なる」「職員のマナーや対応を改善してほしい」といった、サービス内容に関する正当な指摘や意見。

カスタマーハラスメント

社会通念上許容される範囲を超える不当・過度な要求や、威圧・脅迫・暴言・長時間の拘束など、不適切な態度・手段を伴う言動。

判断のポイントは、「何(内容)を要求しているか」だけでなく、「どのような態度・手段(態様)で要求しているか」を含めて個別に冷静に判断することです。

3.介護現場で想定されるカスハラの具体例

介護現場では、利用者やその家族との距離が近く継続的なサービスを提供する特性から、以下のような具体的行為が問題となります。

  • 身体的な攻撃:職員を叩く、蹴る、物を投げつける、つばを吐きかけるなど
  • 精神的な攻撃:暴言、侮辱、人格否定発言、土下座の強要、SNSへの個人情報投稿や盗撮・無断撮影などの脅し
  • 威圧的な言動:大声で怒鳴りつける、「事業所を潰す」といった脅迫、反社会的な言動
  • 継続的・執拗な言動:同じクレームの度重なる反復、長時間・過剰な電話やメールの強要
  • 拘束的な言動:長時間帰らせない、電話を切らせない、事務所への長時間の居座り

4.介護事業所に求められる5つの基本措置

2026年の義務化に向けて、介護事業所が組織として準備すべき取り組みは大きく分けて5つのステップがあります。

取り組み項目 実務における具体的対応
① 基本方針の明確化と周知 ・カスハラに対する事業所の基本方針を明文化する
・職員だけでなく、利用者やご家族へも周知・広報を行う
② 相談体制(窓口)の整備 ・「職員→管理者→法人本部」などの明確な相談ルートを設ける
・職員が一人で抱え込まず安心して相談できる環境を整える
③ 職員研修の実施 ・正当な苦情との違いや判断基準を共有する
・初期対応や安全確保のノウハウを学ぶ研修を定期開催する
④ 事後対応マニュアルの整備 ・複数名での対応ルールや正確な事実記録の体制を作る
・警察・行政・弁護士等との連携・相談基準をあらかじめ策定する
⑤ 再発防止と検証 ・発生事例を分析し支援方法を見直す
・相談した職員に対する不利益取扱いの防止を徹底する

5.運営規程・重要事項説明書の記載例と見直しポイント

カスハラに対処する際、「根拠となる明確な規程があるか」が極めて重要になります。事前に文書化し、契約時に説明しておくことが未然防止と組織的な適切な対応の土台となります。

運営規程への記載例

条文として「苦情処理」などの項目に関連させ、事業所の姿勢と具体的な禁止行為を明記します。

【運営規程 記載例案】
第◯条(カスタマーハラスメントへの対応)
1.本事業所は、利用者又はその家族等からの言動のうち、社会通念上相当な範囲を超える要求又は言動により、職員の就業環境を害するおそれのある行為(以下「カスタマーハラスメント」という。)について、職員の安全及び尊厳を確保し、適切な介護サービスを継続的に提供するため、組織として必要な対応を行うものとする。
2.前項に定めるカスタマーハラスメントには、次に掲げる行為を含むものとする。
(1)暴言、威圧的な言動、人格を否定する発言
(2)業務の範囲を超える過度又は不当な要求
(3)合理性を欠く長時間の拘束や、執拗な要望・クレーム
(4)その他、職員の就業環境を著しく害する行為
3.本事業所は、カスタマーハラスメントが発生した場合、複数名による対応、事実関係の記録、管理者への報告等を行い、状況に応じて適切に対応するものとする。

重要事項説明書への記載ポイント

重要事項説明書では「ハラスメント禁止」という硬い表現のみならず、「正当な苦情やご意見は歓迎するが、職員の安全と尊厳を著しく損なう行為に対しては組織で対応する」という対話を意識した表現で理解を促します。

悪質なケースが継続し改善が見られない場合には、信頼関係の破綻を理由とした「契約解除」や「サービス見直し」の可能性についても触れておくとスムーズです。

※指定権者(自治体)への確認:
運営規程や重要事項説明書の改定にあたっては、サービス種別や管轄自治体(指定権者)が示す最新の指針・ローカルルールも必ずご確認ください。

6.介護現場ならではの留意点「認知症・障害特性」への配慮

介護現場のカスハラ対策では、一般企業と同じ考え方だけでは対応できない場合があります。利用者の言動の背景に「認知症の症状」や「障害特性」が存在するケースがあるためです。
不適切な言動があった場合でも、直ちに「問題行動=カスハラ」と断定するのではなく、以下のような背景を多角的に分析することが求められます。

  • 認知症に伴う周辺症状(BPSD)や心理状態
  • 障害特性や身体的苦痛・不快感
  • ご家族の介護疲労やサービスへの理解不足

ただし、背景事情があるからといって、「介護職員が無制限に暴力や暴言に耐えなければならない」という意味ではありません。
障害者差別解消法に基づく合理的配慮を行いつつ、「適切な支援の提供」と「職員の安全確保」を高度に両立する組織体制を構築することが大切です。

7.今すぐ確認!カスハラ対策チェックリスト

義務化に向けて、貴事業所で準備・整備ができているかチェックしてみましょう。

8.まとめ|カスハラ対策は「職員と事業所を守る大切な基盤」

カスタマーハラスメント対策は、単に「規定やマニュアルを作成して終わり」ではありません。
最も重要なのは、「実際の現場でトラブルが発生した際、職員を組織でしっかり守れる実効性のある仕組みになっているか」という点です。
カスハラ対策は、利用者やご家族と対立するための制度ではなく、理不尽な言動から職員を守り、質の高い介護サービスを安定して提供し続けるための不可欠な基盤です。
2026年10月の義務化に備え、まずは事業所内での現状チェック、規程の見直し、職員研修の計画などから順次進めてまいりましょう。

■ 関連法令・参照情報源(厚生労働省)

制度の正しい理解やマニュアル作成の際は、以下の公式資料を合わせてご参照ください。

  • 厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
  • 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
  • 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」
  • 厚生労働省「管理者向け研修のための手引き」 / 「職員向け研修のための手引き」
  • 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント事例集」
  • 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策リーフレット」
  • 指定居宅サービス等、指定地域密着型サービス、指定居宅介護支援等の各基準・解釈通知