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3‑10.介護事業所の運営規程や重要事項を、最新版にアップデートする解説コラムvol.1

2025年最新|介護事業者の運営規定や重要事項の法務チェック・レビュー

厚生労働省の省令や基準に合わせて、ここを見直しすればOK
【東京都の居宅サービス:訪問系サービス篇】

介護事業所の運営規程のひな形(記入例)を、最新版にアップデートする解説コラムvol.1

東京都のひな形(記入例)を引用している介護事業所は必見!
《《《以前のコラム 2025年度版「運営規程や重要事項の解説」AIを活用した法務チェック 前篇  
《《《以前のショート動画 すぐ分かる! 3分 介護ネタ『わかふじDX』ネットで検索
以前の解説コンテンツでは、介護事業所の運営規程のひな形(記入例)を扱いましたが、運営規定や重要事項の情報は、近年の社会情勢や事業環境に応じて、様々な事項が追加・更新されてきています。
例)自然災害や感染症への対策(BCP)、人権に配慮した虐待や拘束の防止、ハラスメント対策、インターネットでの電子掲示・公表など
東京都が例示する運営規定の記入例を見ると、その情報時点がやや古いものや基準に未対応のものがありましたので、それらを補完して、最新版にアップデートするポイントや変更点を解説していきましょう。

🔍 チェック対象となる主な訪問系サービス
1.訪問介護
2.訪問入浴介護
3.訪問看護
4.訪問リハビリテーション
5.居宅療養管理指導

事前の留意点
・運営規程や重要事項等の情報は、令和6年度介護報酬改定における改定事項を受けて、全サービス共通して、インターネット上での電子掲示・公表することが求められます。(令和7年度より義務付け)
・運営規程や重要事項等の法務については、サービス提供する事業環境に合わせて、各自の介護事業所が責任を持って作成してください。(当サイト上にも、利用規約として免責事項や禁止事項等を定めています)

◆このコラムでは、東京都が例示する運営規程をチェック
・指針となる厚生労働省の省令や基準は
・東京都の運営規程のひな形(記入例)は
・AIによる法務チェック・レビューは
・アップデートするポイントや変更点は
→運営規程のアップデート版はダウンロードできます


指針となる厚生労働省の省令や基準は

介護事業所の運営規程等の情報については、厚生労働省が定めるサービス種別ごとの運営基準がベースとなり、社会情勢や事業環境を踏まえて、その内容が改定されています。
介護サービスの代表例として訪問介護を例に挙げると、令和6年度の改定を受けて、細かな変更や追加がされています。(重要事項のウェブサイト掲載も追加
指針となる厚生労働省の省令や基準運営規程や重要事項の省令や基準
参考情報
厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」


東京都の運営規程のひな形(記入例)は

東京都の運営規程などの情報は、標準的なひな型や書式で示していることが多く、東京都のひな型が、全国的な記入例になっているケースもあります。
そして東京都福祉局のホームページでは、事業所向けの介護サービス情報を案内しており、このページ上に運営基準や運営規程の記入例が掲載されています。
ケース事例:東京都福祉局「介護サービス情報」
運営規程や重要事項のひな形5_4
参考情報
東京都福祉局「東京都介護サービス情報」


AIによる法務チェック・レビューは

ではテスト検証として、東京都のひな形(記入例)を使って、AIによる法務チェック・レビューのケース事例を試してみましょう。
ChatGPTによる法務チェックやレビュー
ChatGPTによる法務チェック・レビュー
・指針となる厚生労働省の省令や基準
・東京都の運営規程のひな形(記入例)
参考情報
厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
東京都福祉局「東京都介護サービス情報」
》》》ChatGPTが回答した、法務チェックやレビューの結果は


アップデートするポイントや変更点は

東京都のひな形(記入例)では、居宅サービス:訪問系サービスそれぞれについて法務チェック・レビューを行い、次のようなチェックのポイントと変更点が挙がりました。

【1.訪問介護】⚠️ 修正・補足が必要なポイント(改善提案)

①【業務継続計画(BCP)未記載】
・基準条文:第30条の2
・問題点:感染症や災害への備え(BCP)の策定・周知・訓練等が未記載
・修正例:「当事業所は、感染症や災害発生時に備えた業務継続計画(BCP)を策定し、定期的な見直し及び従業者への周知・訓練を行う。」
②【感染症対策構造の不備】
・基準条文:第31条
・問題点:感染症対策委員会・指針・研修の3要素が未記載
・修正例:「感染症予防のため、委員会を年1回以上開催し、指針を整備し、研修を定期実施する」
③【ハラスメント防止措置の欠如】
・基準条文:第30条第4項
・問題点:パワハラ・セクハラ等の防止方針が不明
・修正例:「職場におけるハラスメント防止のため、明確な方針を定め、相談窓口及び研修を設置する」
④【苦情処理の行政対応未記載】
・基準条文:第36条
・問題点:市町村・国保連等による苦情対応支援や協力義務が未記載
・修正例:「苦情処理に際しては、市町村または国民健康保険団体連合会の調査・指導に協力する」
⑤【掲示義務の欠如】
・基準条文:第32条
・問題点:運営規程の概要や職員体制等の掲示義務が未記載
・修正例:「運営規程の概要等を事業所内に掲示し、常時閲覧可能とする」
⑥【介護の総合提供の記載なし】
・基準条文:第29条の2
・問題点:「特定の援助に偏らず総合的に提供する」旨の明記なし
・修正例:「当事業所は、入浴・排せつ・食事・家事援助等の介護を、利用者の状態に応じて総合的に提供する」

📝まとめ:優先的に修正すべきポイント(上位6つ)

優先度 改善項目 修正の必要性
★★★ 業務継続計画(BCP) 【必須:新設】
★★★ 感染症対策3点セット 【必須:新設】
★★★ ハラスメント防止規定 【必須:新設】
★★☆ 掲示・閲覧義務 【必須:新設】
★★☆ 苦情対応の行政連携 【重要:追記】
★★☆ 介護等の総合的提供方針 【重要:追記】

【2.訪問入浴介護】⚠️ 改善・追記が望まれるポイント

①その他運営についての留意事項
・基準条文:第13条
・問題点:「従業者の資質向上」や「秘密保持」等の内容は記載されているが、認知症介護に係る基礎的研修の受講義務が明記されていない。
・修正例:「すべての訪問入浴介護従業者に対し、認知症介護に係る基礎的研修を受講させるための措置を講じる」旨を明記。
②ハラスメント対策
・基準条文:第53条の二 第4項
・問題点:セクハラ・パワハラ防止に関する記載が見当たりません。
・修正例:「訪問入浴介護従業者の就業環境が害されることを防止するため、ハラスメント防止の方針を明確化し必要な措置を講じる」との記載を追加。
③記録の整備
・基準条文:第53条の三
・問題点:備品、会計、サービス提供記録、身体拘束・苦情・事故等に関する記録の保存義務の網羅性にやや欠ける部分あり。
・修正例:「従業者、備品、会計、サービス内容、身体拘束、事故、苦情等に関する記録を整備し、完結の日から2年間保存する」旨を追加することが望ましい。

✍ 補足(分かりにくい表現の改善例)

第6条2項の「主治医の意見を確認した上で」:
 →「あらかじめ主治医の意見を得た場合には、看護職員に代えて介護職員を派遣できる」と明確に。
・第8条の空欄箇所(サービス利用時の留意点):
 → 例:「入浴前は食事を控えていただくようお願いする場合があります」など、具体的事例を記載すると親切です。

法務チェック・レビューの総評

全体的に、厚生労働省基準に概ね適合しており、実務的にも整った内容ですが、近年強化されている分野(認知症研修、ハラスメント防止、記録管理)への対応がやや不十分です。
これらの点を明文化・追記することで、より信頼性が高く法的に万全な運営規程となります。


【3.訪問看護】⚠️ 追加・修正を推奨(基準に対して不十分または曖昧な箇所)

①記録保存
・基準条文:第73条の2
・問題点:保存対象の記録が不明確。「諸記録」とのみ記載されている。
・修正例:以下の8点を明示すべき:①指示書、②訪問看護計画書、③報告書、④サービス提供記録、⑤身体拘束、⑥市町村通知、⑦苦情、⑧事故記録等
②ハラスメント防止
・基準条文:第73条
・問題点:明記なし。第73条の条文にはないが、近年必須対応。
・修正例:「職員の就業環境を守るため、ハラスメント防止に関する方針を明確にし、必要な措置を講じる」等の条文を追加。
③利用者向けの「サービスの留意点」
・基準条文:第73条
・問題点:利用時の注意点が明文化されていない。
・修正例:「訪問看護の提供にあたって、次の事項に留意するものとする」などの注意書きを項目化すると利用者にも親切。
(1) 訪問予定時間の直前の食事摂取は控えることが望ましい。(2) 発熱や体調不良がある場合は、速やかに事業所へ連絡すること。(3) 医師の変更や処方の変更があった場合は、速やかに事業所へ報告すること。

✍ 用語や表現の改善提案(わかりやすさ・丁寧さ)

表現例 改善案
「適当数」 理学療法士等の雇用について、「必要に応じて雇用する」など具体的に。
「苦情等に迅速に対応する」 「苦情等には速やかに対応し、その結果を記録・保存します」とより具体的に。
「秘密を漏らしてはならない」 「正当な理由がない限り、業務上知り得た個人情報を第三者に漏らすことを禁じます」に言い換えると丁寧。

✅ 総合評価と推奨対応

記入例としては非常に完成度が高く、基準に沿って運営されている印象を受けます。
ただし、以下の3点を加えることで、より法的に整合性の取れた運営規程になります。
・記録整備の対象(8項目)の明記
・ハラスメント防止条文の追加
・利用者向け留意事項の明文化


【4.訪問リハビリテーション】⚠️ 修正・補足が必要なポイント(改善提案)

①記録整備
・基準条文:第82条の2
・問題点:条文内に明確に触れられていない。第12条の一部で言及はあるが、不十分。
・修正例:以下6項目の記録保存義務を新たに明記する:
①リハビリ計画、②サービス提供記録、③身体拘束記録、④市町村通知、⑤苦情記録、⑥事故記録
②ハラスメント防止
・基準条文:第82条
・問題点:明記なし。近年の指導では必須対応。
・修正例:「職場環境保持とハラスメント防止方針の明確化および対策」を条文化すると望ましい。
③利用者向け留意事項
・基準条文:第82条
・問題点:利用者が気を付ける点(服装・安全など)の記載がない。
・修正例:「安全なサービス提供のための利用者へのお願い」などの項目を加えると親切。

✍ 表現の補足・改善提案

現行表現 改善例 理由
「事故が発生した場合は、必要な措置を講じる」 「応急処置を行い、必要に応じて救急搬送を行うなど、迅速な対応を行う」 具体化して実効性を高める
「記名捺印を受けることとする」 「利用者または家族に文書で説明し、同意の署名(記名押印)を取得する」 表現の丁寧化と実務性の強化

✅ 総合評価と推奨対応

この記入例は、厚労省の基準に対して非常に高い水準で準拠しています。とくに目的・方針・人員配置・連携・研修制度・事故対応などは、明文化が徹底されています。
ただし、以下の補強が望まれます。
・記録整備に関する条文の追加(計画・苦情・事故等)
・ハラスメント対策の条文化
・利用者向けの留意事項の新設


【5.居宅療養管理指導】⚠️ 修正・追加を推奨するポイント

①記録の整備
・基準条文:第90条の2
・問題点:明確に条文化されていないため、法的には不十分。
・修正例:新たに「記録の整備及び保存に関する条項(例:第13条)」を追加して、以下の5項目の記録保存(2年)を明記。
① サービス提供記録 ② 身体拘束の内容・理由 ③ 市町村通知記録 ④ 苦情の内容 ⑤ 事故の内容と対応
②ハラスメント防止対策
・基準条文:第90条
・問題点:義務ではないが、厚労省指導・監査での注視ポイント。
・修正例:「ハラスメント防止に関する方針および相談・対処体制を整備する」旨の条文を追加(例:第15条)
③サービス利用上の留意点(利用者視点)
・基準条文:第90条
・問題点:利用者側の注意点が示されていない。
・修正例:「サービス利用時の留意事項」として「発熱・体調不良時の連絡」「服薬内容変更時の報告」等の項目を追記(例:第16条)

✍ 表現の改善例

現行 改善案 理由
「必要な措置を講じる」 「記録・報告・関係機関への連絡等の対応を行う」 より具体化して実効性を持たせる
「実費を徴収する」 「実費の範囲内で設定し、事前に説明・同意を得る」 利用者保護と丁寧な対応を示すため

✅ 総合評価と推奨対応

現行の運営規程記入例は、法定基準に概ね適合しており、実務に即した構成です。特に「職員配置」「苦情・事故対応」「虐待防止」に関しては高評価です。
一方で、以下の点については加筆修正が必要です。
・記録整備の条文(保存義務を明記)
・ハラスメント防止方針
・利用者への留意事項(利用者視点)


運営規程のアップデート版はダウンロードできます

法務チェック・レビューを踏まえた、運営規程の改定案は、こちらをクリックしてご覧ください。
1訪問介護_運営規程_アップデート版

2訪問入浴介護_運営規程_アップデート版
3訪問看護_運営規程_アップデート版
4訪問リハビリテーション_運営規程_アップデート版
5居宅療養管理指導_運営規程_アップデート版


法務チェック・レビューの振り返り

このコラムでは、東京都が例示する運営規程(記入例)について、東京都の居宅サービス:訪問系サービスについて取り上げました。
いずれのサービス種別についても変更・補足するポイントには、「記録の整備」「ハラスメント防止」「サービス利用上の留意点」が共通して挙がる傾向にあります。
また訪問介護や訪問入浴介護のように、サービス種別ごとに個別の特定事項が基準化されて、個別事項が追加されるケースもありました。
続くコラムでは通所系サービスについても、同様に最新版にアップデートするポイントや変更点を展開していく予定です。
《東京都の居宅サービス:通所系サービス篇》
》》》次のコラム 
3‑11.介護事業所の運営規程や重要事項を、最新版にアップデートする解説コラムvol.2 (予定)


◆重要事項のお試しサポート
新宿の介護事業所向けには、重要事項のお試しサポートとして、30分で法務チェックして、変更点や参考事例をアドバイスするキャンペーンを行っています。
(新宿区の事業所向けに、7月末まで8~9事業所ほどを想定)
重要事項のお試しサポート

◆介護事業所の運営規程や重要事項の解説 シリーズコラム
2025年度版「運営規程や重要事項の解説コラム」イントロダクション
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2025年度版「書面掲示は簡単に(神ワザ)」スッキリ整理の実践
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2025年度版「電子掲示は完結に(複合ワザ)」デジタル活用術の手引き 後篇
2025年度版「運営規程や重要事項のひな型検証」東京都 vs 大阪府
2025年度版「運営規程や重要事項のひな型検証」地域密着型サービス
2025年度版「運営規程や重要事項の解説」AIを活用した法務チェック 前篇
2025年度版「運営規程や重要事項の解説」AIを活用した法務チェック 後篇


参考情報(出典)
介護事業所の運営規程や重要事項等の情報については、厚生労働省や管轄行政の発表資料をご覧ください。
・厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
・厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
・厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護老人保健施設の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定介護医療院の人員、設備及び運営に関する基準」
・厚生労働省「指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準」
・東京都福祉局「東京都介護サービス情報」