「勘と経験」から「データ活用」の時代へ!事業所に求められる実務とシステム対応とは?
《《《前のコラム 6-5.【令和9年度の解説コラム:前半】第1号保険料と給付・負担の見直しを徹底解説

【介護DX&経営】介護情報基盤・経営情報提出・適正化の最新動向と準備
令和9年度介護報酬改定を見据え、介護保険部会で報告された「介護情報基盤」「経営情報の調査・分析」「介護給付適正化」を徹底解説。ケアプランデータ連携や財務報告の義務化など、介護事業所が今から取り組むべきICT・経営体制の実務準備リストもあわせて掲載します。
はじめに:「データを活用して制度を運用する時代」へのシフト
前半のコラムでは、令和9年度改定の根底にある「給付と負担」という制度構造のテーマを解説しました。後半で取り上げるのは、そうした構造変化を受け止め、介護現場の業務や経営を直接変えていく「3つの新しい運用仕組み」です。
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、以下の3項目に関する進捗と方向性が報告されました。
- 介護情報基盤(介護DXの推進)
- 介護サービス事業者 経営情報の調査及び分析
- 介護給付適正化に向けた取り組み
一見すると別々の行政施策に見えますが、共通するキーワードは明確です。それは「データ」です。介護業界は今、長年続いた「紙と経験に基づく運営」から、「データを電子的につなぎ、経営や指導に活かす運営」へと決定的な転換期を迎えています。
1. 介護情報基盤と介護DX:情報が「つながる」ことで現場はどう変わるか?
これまで介護現場では、市区町村、ケアマネジャー、通所・訪問事業所、医療機関がそれぞれ独自のソフトや紙の書類で情報を管理していました。その結果、「同じ内容を何度も別の書類に転記する」「FAXで送信し、電話で到着確認をする」といった非効率な業務が常態化していました。
これを根本から変えるのが、国が整備を進める「介護情報基盤」です。要介護認定情報、ケアプラン、医療データなどをクラウド上の共通基盤で電子的に共有・閲覧できるようにする仕組みであり、すでに運用が始まっている「ケアプランデータ連携システム」とも一体的に連動していきます。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
💡 本質的なメリット:
単に「ITツールを入れる」ことではなく、重複入力や問合せ対応に奪われていた時間を削り、「職員が本来行うべき直接的なケア業務や利用者との対話に集中できる環境をつくること」にあります。
2. 「経営情報の調査及び分析」の義務化:数字で自社を語る時代へ
すべての介護サービス事業者を対象(一部小規模事業者等を除く)として、毎年度の経営情報(損益計算書や貸借対照表、人件費率など)を国へ報告する制度が本格稼働しています。
急激な物価高騰、人件費の上昇、地域ごとの需要変化に対し、国が介護業界全体の経営実態をタイムリーに把握することが設置の目的です。
提出された財務データは、次回(令和9年度)以降の介護報酬改定や、処遇改善加算の要件設定における「絶対的な定量的根拠」として扱われます。事業者にとっては単なる行政手続きと捉えず、自社の売上構造や人件費率を客観的に把握し、地域での経営健全性を高めるための自社分析の好機として活かす姿勢が求められます。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
3. 「介護給付適正化」の強化:データ突合による点検の精度向上
公費と保険料で成り立っている制度である以上、不適切な請求やルールに反したサービス提供を防ぐ「給付適正化」はより厳格化されます。
具体的には、ケアプラン点検に加え、「医療情報と介護給付情報の突合・縦覧点検」などが全自治体規模で実施されています。従来のように人間が書類を1枚ずつ確認するスタイルから、システムが自動でデータの不整合(重複請求や加算要件の未達など)を検知し、重点的に指導を行う「データ駆動型点検」へと移行しています。日頃からの「記録と請求の完全な一致」が不可欠です。
出典:厚生労働省のホームページや発表資料を引用・編集
令和9年度に向けて今すぐ着手すべき「実務準備チェックリスト」
令和9年度改定に向け、事業所が今日から準備できるアクションをまとめました。
📌 まとめ
単に報酬のプラス・マイナスに一喜一憂するのではなく、「データで運用される新しい介護保険制度の仕組み」にいち早く自社の運用をアジャストさせていくこと。それこそが、令和9年度改定を乗り越え、地域で選ばれ続ける事業所となるための第一歩です。
参考資料・情報源
- 厚生労働省「社会保障審議会(介護給付費分科会)」
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の広報資料について」
- 厚生労働省「令和9年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」
- 厚生労働省「全国介護保険担当課長会議資料」
※本稿で解説している制度・内容等は検討段階のものであり、今後の審議・省令発出等で変更される可能性があります。
最新情報は厚生労働省および自治体の公式情報を必ずご確認ください。
